モノクロ映画紹介。シェイクスピアの映画「ロミオとジュリエット」43歳でロミオ役?

モノクロ映画紹介。シェイクスピアの映画「ロミオとジュリエット」43歳でロミオ役?

モノクロ映画紹介「ロミオとジュリエット」

(当時作られた映画館用のロビーカードというもの)

 

「ロミオとジュリエット」ご存じですか?

英国の戯曲家ウィリアム・シェイクスピアが書いた悲劇で,世界で最も美しく、甘いロマンス劇といわれています。

現代だと、レオナルド・ディカプリオ主演の「ロミオ+ジュリエット」(1996年バズ・ラーマン監督)が有名でしょう。原作を現代に当てはめた映画でしたね。

今回紹介するのは、映画化としては、おそらく最初になる1936年のアメリカ映画「ロミオとジュリエット」です。

演ずるのは、ロミオ役がレスリー・ハワード、ジュリエット役はノーマ・シアラー。この俳優さんは以前にこのブログで紹介した映画「マリーアントワネットの生涯」にて主演を務めた方。

時系列的には、「ロミオとジュリエット」が先に作られて、「マリーアントワネットの生涯」はそのあとになります。

 

世界で最も甘く、美しい恋愛物語っってどんな話?

(シェイクスピア肖像画)

シェイクピアの戯曲って読んだことありますか?

戯曲というのは、演劇用の台本ですね。もちろん本として読むことも可能です。

シェイクスピアの戯曲は、セリフの詩の表現に美しさや楽しさ、人生について深い洞察を感じることのできるものだと思っています。

最初は読みにくいと感じることもあると思いますが、ちょっと興味を持ち始めると、良い意味でずーっと考え込んでしまう面白さがあるように感じます。

多くの日本語訳本が出てますので「ロミオとジュリエット」ぜひ読んでみてください。分量もそれほど長くないので、こちらは読みやすいと思います。

後世に残る41本(共作を含めればもっと増える)の戯曲を残した天才は、その名をウィリアム・シェイクスピアといいます。

1564年(16世紀)に、イングランド中部(英国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドで構成されています)にある町で生まれ、1616年に亡くなっています。(日本では信長、秀吉、家康の時代ですね)

18の頃、8つ年上のアン・ハサウェイという女性と結婚し3人の子を授かりました。その後、ロンドンへ単身赴任。劇場で仕事をしながら(どうやら俳優と劇作家として働いていたようです)、1590年頃「ヘンリー6世」を書き始め、このころから劇作家として頭角を現すようになっていきました。

そして今回取り上げる映画の原作「ロミオとジュリエット」は、1594年~95年に書かれたものとわかっています。(日本は戦国時代まっただなかですね)

さてさて、物語の概略をサッと語っていくとします。

話の舞台は、イタリア北部の町ヴェローナ(実際にある古い街) 。

この街には、モンタギューとキャピュレットというふたつの名家があり、両家は常に争い、憎しみ合っていました。

物語の主人公であるふたりの男女は、ロミオがモンタギュー家の息子、ジュリエットはキャピュレット家の娘となります。

両家の反目は、街を治める大公も頭を悩ませていました。

ある時、キャピュレット家の仮面舞踏会にロミオが忍び込みます。そこで仇敵の一人娘であるジュリエットに出会い、ふたりは一瞬で恋に落ちたのです。

愛をささやきあい、親に隠れて結婚をするふたり。しかし、両家の対立はそのままであり、結果、罪を重ねていくロミオ。

ふたりの純粋で深い愛情と両家の対立構造。このどうすることもできない状況は、ふたりの未来を急ぎ足で破滅へ導いていくのです。

という流れです。

ちなみの設定年齢はジュリエットが14歳。ロミオは10代かと思われます。

このとき主演のノーマ・シアラーは32歳、レスリー・ハワードは43歳!かなり大人の人が演じていたんです。

でも、不思議なことに映画が進むにつれ、違和感は全然感じないのです。これが役者のすごみなのか、物語の魅力なのか。

 

有名なセリフ「どうしてあなたは・・・」 

 (バルコニーで愛を語り合うシーン)

「ロミオとジュリエット」といえばあなたもこの言葉を思い浮かべませんか?

 ジュリエット「ああ、ロミオ、ロミオ どうしてあなたはロミオなの お父上と縁を切り その名を捨てて。 それができないのなら、私を愛すると誓って。 私が名を捨てます」

「その名前こそ私の敵、名前なんて!」

「バラは花を変えても同じ香り、ロミオだってそうよ、その名を失っても魅力はそのまま ロミオその名を捨てて そんな名前は必要ないわ。 私を選んで。」

 ロミオ「仰せの通りに!・・・」

 

 バルコニーを舞台にした有名なやり取りです。

今回取り上げた映画では原作と比べると、少しセリフがカットされています。

この場面、私、ジュリエットがロミオに向かって話していると思っていたんですけれど、映画を見ても、訳本を読んでも違いました。

ジュリエットはバルコニーに出て誰もいないと思って自分の想いを話しだす。

それをこっそりやってきたロミオがバルコニーの下で聞いているという構成になっていたんですね。

つまり、ジュリエットは告白を思いっきり聞かれてしまったという赤面間違いなしの状態だったのです。あなたは耐えられますか?

ジュリエットはもう何でも言ってしまえと、ロミオへ思いをぶつけ、ロミオもそれに答えます。

ここから時間をかけてロマンチックな詩の会話が続くのですけれど、一気に燃え上がるふたりの愛のように、物語りは、一気に破滅へ向かって加速していくのが、結末を知っているだけになんとも切ない。

こういう関係性って現代でもあるんでしょうね。例えば家柄や仕事国内外問わず。

ああ、恋は盲目とはこのことなんだなぁと改めて感じる私。

 

絵画の世界でも題材に。

シェイクスピアの作品は多くが絵画に描かれています。

「ロミオとジュリエット」も、もちろんです。こちらはフランク・ディクシーという画家が描いたもので、秘密結婚をし、初夜を迎え朝を迎えるころ見つからないように別れを告げる場面。1884年。

この絵画の場面、今回の映画「ロミオとジュリエット」1936年版では、ロミオが見つからないようにジュリエットの部屋へ入り、人が来る前に去っていくのに要した時間は4分33秒。

これは見ていてハラハラ。4分半ですよ。

その間、愛を語らいながら、もう日の出だよ、いえまだよ・・・なんていう詩的な会話をするわけです。いやちょっと早くいかないとやばいよロミオさん。大きな罪があって追放処分だし、何やってんの!と思ってしまいます。

その時の会話の一部抜き出しますと、

ジュリエット「もう行ってしますの、まだ夜明け前よ。あれはナイチンゲールよ。ヒバリじゃないわ、ザクロの木の上で歌うの。本当よあれはナイチンゲール。」(抱き合う)

ロミオ「あれはヒバリだよ。朝を告げる鳥さ。」「ほら、東の雲を裂くのは嫉妬の稲妻、夜の火は燃え尽きた。霞んだ山から太陽が顔を出す 行かねば 死ぬ運命だ」

ジュリエット「あれは朝陽じゃないわ あれは彗星よ マントゥア(ロミオの追放先)までの道を照らしてくれる だから行かないで」・・・などと語り合っているのです。

観てるヤキモキしてきます。早く部屋出ていけよって。

結婚したばかりのふたりの会話に登場するナイチンゲールは、西洋では夜の鳥のされ、夜明け前によく鳴く鳥。

夜明け前なので朝じゃない、まだ大丈夫、、、とふたりがいつまでも一緒にいたい、言い聞かせる心情を表すための象徴です。

対になっているのがヒバリで、西洋では朝を告げる鳥、また「けがれのない愛」を表す鳥とされています。

ヒバリの鳴く時間にロミオがジュリエットのもとを去れば無事でいられることを示し、ふたりの愛は純粋であるという象徴となっています。

悲劇には違いないけれど

仮死状態のジュリエットを本当に亡くなった思い込んだロミオは毒をあおって命を絶ちます。その後、目覚めたジュリエットは、秘密に結婚した夫ロミオの姿を見て自らも命を絶ちます。

家の争いによって若いふたりに悲劇が襲う。そしてその悲劇から争うことのむなしさを学び、憎しみ合っていた両家は手を取りあって映画は終了。

一世一代の愛と死は隣り合わせかなのか?

生まれながらの運命を乗り越える。それは時代によって考え方が大きく異なるのではないか?

悲劇なのに暗い感じがしないのは詩の美しさによるものなのか?ペストが流行していた時代なので(映画の中でも悲劇のきっかけとなる)一層、そこにこだわったのか?

やはり、この時代は家長制度が非常に厳しくて父親の命令は絶対なのだなぁ。

他にも、この映画から、愛と戦い、愛と家庭、愛と友人、愛と・・・なんでしょうね・・・などと考えに耽ってしまいました。

ロミオとジュリエットは生まれの定め「家」に翻弄されつつも、愛を貫くことでその宿命を乗り越えることができたのでしょう。

ふたりの愛と死。

そこには若者の無力、不器用、まっすぐな想い、そういうことが感じられます。ふたりは、どんなに美しい詩を語り合っても人間臭いのです。

美しさ、甘さだけの物語ならこれほど長く読まれ続けないでしょう。

人間臭さを物語のあちこちで感じさせるからこそ読む人の心に染み入る、と私は考えたのでした。

 

 とはいっても愛のために命を・・・というのは創作の世界だからこそ成り立つことです。

 

このモノクロ映画「ロミオとジュリエット」(1936年)はAmazon primeでみることができます。

ロミオとジュリエット

 

 参考資料

・新訳 「ロミオとジュリエット」、訳 河合祥一郎、KADOKAWA、平成17年

・「シェイクスピア名言集」、著者 小田島雄志、岩波書店、1985年

・「シェイクピアの講義」、著者 ノースロップ・フライ、三修社、2009年

・「名画で見るシェイクスピアの世界」、著者 平野洋、KADOKAWA、2014年

・「はじめてのシェイクスピア」 著者 梅宮創造、王国者、2002年 

 

執筆者

青木 雅司

美術検定1級アートナビゲーター

画像の左上が私です。こういう画像をたまに制作しています。

アクリル絵の具を使ったマーブリングを撮影して、自分で撮った画像と組み合わせています。

昔、大阪と名古屋でラジオ局のディレクター長いことやってました。

あいちトリエンナーレ2013メンバーでした。

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