幼い頃に憧れていた、たまごっちを中古で買った。
幼い頃に親に見せてもらえなかった、ヤクザ映画をビデオ屋で借りた。
幼い頃に着てみたかった、真っ赤なロリィタ服を高校生になって買った。
幼い頃に欲しかった、当時の私たちが喉から手が出るほど欲しかった、キャラクターグッズやブランドがリバイバルしている今。
少しだけ自由になって、お金を持ち始めて、あの頃の夢を叶え始めている私たち。
そんな中で、幼い頃にフリフリのお洋服に憧れた女性は多いのではないでしょうか。
私が幼い頃、原宿に行くとロリィタファッションのお姉さんに必ず遭遇できたのだ。
ロリータファッションを見る事が大好きだった私に、母が「見てあーちゃん、ロリータのお姉さんいるよ」と教えてくれた日が懐かしい。
私が中学生に上がる頃に、おしゃれの街「原宿」に憧れの気持ちを抱いて、再び足を運んだ際にはロリータは絶滅していた。
下妻物語も映画公開から10年ぐらい経っており、あの頃よりKERAを読んでいる方もいなくなってしまい、いつかは電子版に切り替わり、ヴィジュアル系のブームも落ち着いてしまったのだ。
大人になったら絶対に、竹下通りのロリィタ集団の中に私も混ざる!と意気込んでいた、いつしかの憧れは遠い彼方へ。
少しだけ忘れていたあの頃の憧れを、大人になって叶える事に、ちゃんと意味があると思った。
RonRonのワンピースを着て、その気持ちを思い出したのだ。
今となってはラグジュアリーでシックなファッションが好きだけれど、幼い頃に「大人になったら絶対に、真っ赤なフリフリのワンピースを着る!」と思っていた私には夢心地にしてくれる、RonRonのワンピース。
袖を通すだけで、あっという間の一張羅。
派手で可愛ければ可愛い程、気分を高めてくれる。
突然のフリルで外に出るのが恥ずかしかったら、お部屋の鏡の前でウットリするのも最高だと思う。
化粧も覚えて、ダイエットも覚えて、吸いも甘いも覚えた私が、このワンピースを着て鏡に映った姿は、あの頃なりたかった女の子であった。
過程を生きる人間にひとときの結果を与えるロリィタワンピースは本当に甘やかで、『かわいい』という芯が通っている。
ロリィタファッションを着ている私は、主人公であり、お人形であり、お姫様であり、アイドルであり、マドンナである。
紛れもなくそんな気持ちにさせてくれる『夢』そのものなのだ。
幼い頃におしゃれで可愛いお姉さんを見た時に、黒ギャルであろうと、姫ギャルであろうと、コギャルであろうと、ロリィタであろうと、コンサバであろうと、一貫して「お姫様みたい」と言ってしまう癖があった。
その頃のような、お洒落をしている女子=お姫様という純粋無垢な感性を取り戻させてくれます。
この服を着たまま、家でマルコポーロを飲みながらコンビニスイーツを食べて、好きな映画を見て、化粧も落とさず寝てしまいたい。
とにかく精神までお砂糖漬けにされたくなる。
首の後ろで結んだ、胸元のクロスのリボンが小悪魔で、絶対に簡単に触れてはいけないのに妙に挑発的な少女性が、たまらなく可愛いです。
細かい柄が耽美な雰囲気も備えていて、甘さと品性がかけ合わさった様が、どちらも譲れない私にはグッときます。
お洋服はやっぱり写真で見るよりも、実物のフリルの暴力に殴られて、甘い夢を見る瞬間が最高だと思います。
あの頃リカちゃん人形に着せていた服を、今度は私たちが着る番です。
着用: Rose of Thorns クロスネックリボンワンピース[レッド・Sサイズ]
身長:148cm
執筆者 赤城文(あかぎ・あや)
FREEZINEにてコラム「文系恋人放浪中」連載中